私は音楽大学、いわゆる音大の附属中学、高校出身です。
音大自体はなんとなくイメージというか、学費が高そうとか、就職が大変そうとか、お金持ちしかいなさそう…とかあると思いますが、その附属の中学高校だと未知の世界じゃないでしょうか?
そんな音大附属中高はどういう人が通っているのか、どういう勉強をしてどういう生活をしていたのか今日はお話してみようと思います。
音大附属中学
私が入学したのは都内、山手線の駅の近くに校舎がある音大附属中学です。
入学試験では学科は無く面接と実技試験。ようは楽器の演奏の試験がありました。
私は中学はピアノ科で入学したため試験でピアノを弾いた形になります。
結果は無事合格となり音大附属生活のスタートとなりました。
同学年で入学したのは男子5名、女子13名、計18名のクラスです。
もちろん1クラスしかなく三年間同じクラスで人間関係も同じになります。
自分の学年が極端に人数が少ないわけではなく先輩のクラス、後輩のクラスも同じくらいの人数、男女比だったため平均的にこのくらいの入学人数ということになります。
もう少し上の先輩の代は男子一人というクラスもあったようです。
そんなわけでとても人数が少ないクラス、男子は自分のほかに4人しかいない!ということで始まった音大附属中学生活ですが、まず普通科の学校と違う点としては
- 音楽科目が複数ある
- 実技試験がある
- 専攻楽器の先生が卒業するまで担当してくれる
という点です。
普通科の科目もありますがそれは普通科の学校とレベルは少々控えめですが同じなので割愛します。
高校に上がったら人数は増えクラスも学年に2つになりましたが、男女比は同じような感じです。
どういう学生が居るのか
男女ともに基本的には恵まれた環境で育った子が多いです。特に中学から通う学生はその傾向が顕著で、親が会社役員とか経営者率が非常に高く、それ以外だと教師や公務員といった堅い仕事についている親御さんを持っている学生が殆どです。
男子の特徴は基本的に優しい感じの学生が多いですがちょっとぽやっとしている感じです。
のだめの千秋先輩のようなイケメンでお金持ちで楽器も凄い…みたいな人はちょいちょい居るようなイメージです。あそこまで極端な人はいませんが…
女子は体感上割と綺麗な感じの学生の比率が高いような気がします。
平均的にお金持ちの家庭で育っていて楽器も高いものを持っていたりするので金銭感覚がややおかしいです。
しかし放課後マクドナルドやサイゼリヤにたまる傾向はあったのでそこは普通の学生と同じと言えるのではないでしょうか。
音楽科目とは
音楽科目というのはまず自分の専攻楽器のレッスン、それからソルフェージュと楽典(音楽理論)、実技の合奏(管楽器は吹奏楽、弦楽器は弦楽合奏)合唱、あとは普通科の学校と同じ音楽の授業があります。
ソルフェージュは新曲、聴音、コールユーブンゲンと3つの授業があり、
新曲は簡単なメロディの譜面を初見で見て歌う授業、聴音は先生がピアノで弾いた曲を時間内に採譜する授業、コールユーブンゲンは同名の合唱指導教本があり、それを歌う授業です。
どの授業もレベルに応じて3つほどのクラス分けがあり、自分はどうしても聴音が苦手でいつも真ん中か下のクラスでした。新曲も難しく、楽譜が初見で読めてもちゃんとその通りのリズムと音程で歌えないと評価されないので難しいです。
逆にコールユーブンゲンは良い成績だった記憶があります。
聴音について
聴音は最初はピアノの右手の簡単なメロディだけですが、そのうち左手の伴奏もつくようになり、
上級編になると変な和音や不協和音も採譜しなければならないため、基本的に絶対音感がある方が100%有利です。
上級のクラスはおそらく絶対音感がないとついていけないと思われます。
私は基本的に相対音感で一瞬考えないと正しい位置で音がわからないため、考えている内に次の音が来て分からなくなるといった形で苦手でした。
新曲
初見で歌う難しさがあります。
何分か譜面を見る時間はありますが、慌てやすい人や緊張しやすい人、リズムが苦手な人はかなり苦労します。
あと新曲に限らず歌う授業が多いので、変声期と思春期の男子には辛いものがありました(女の子多いし)
コールユーブンゲン
合唱指導のコールユーブンゲンという本があります。これは非常に有益なもので曲としても歌ってて楽しいですし、実際の合唱の練習にもなります。
合唱をかじってる人はやってみると良いかも
楽典
楽典の本を使って音楽理論の基礎を勉強します。中学だと楽典の本だけ、高校からは和声法の本も使った和声の授業もありました。
すべての音楽の基礎となる部分なので非常に重要な科目です。
合奏
弦楽楽器専攻は弦楽合奏、管楽器専攻は吹奏楽の授業が週一で4時間ほどあります。
これは副科でも希望すれば入れてもらうことはできます。私は中学は副科ヴァイオリンでしたが弦楽合奏に入れてもらってました。
中学高校の段階だとオーケストラは無く大学からです。
合唱
中学高校合同で合唱の授業があります。
入学した途端ヘブライ語の合唱曲を歌わされりしてびっくりします。
賛美歌や難しいクラシック曲が多く、いわゆる中学高校で合唱コンクールで良く歌われがちな曲はやりませんでした。
ちなみに合唱コンクールは授業と別にあり、それは中学高校また合同で行われます。
レッスン
一番大事なレッスンの話です。
専攻楽器を決めて入学するとまずその楽器の担当の先生が割り振られます。
この先生は基本的に大学まで同じ先生につくことが多く、非常に長い付き合いになります。
もちろん相性が悪かったりすると別の先生に変えてもらうことは可能、また特例があり突出して上手だと巨匠クラスの先生にいきなり拾われてその先生が担当してくれる場合があります。
週一で専攻は45分(だったかな?1時間かも)の個人レッスンがあり、レベルに応じてですが基本的に音大の先生なので結構厳しいです。
副科は30分くらいのレッスンになります。
自分のヴァイオリンの先生は口調は優しいものの結構内容はハードな事を言ってくださる先生だったので、なかなか大変でしたが、やはりその分基礎の部分が身についたかと思います。
このレッスンでは試験、各種コンサートに向けての厳しいレッスンが行われます。
コンサートも学年単位の主規模なもの、学年代表が選出される大きなコンサートと様々です。
代表演奏で演奏出来ると非常に大きな大学のホールで演奏できるため自慢になりますし、周りからも良く見られ、男子だととてもモテます。
なので基本的に代表演奏に選ばれるようにレッスンや試験を頑張るのが音大附属中高にいる間の大きな目標といっても過言ではありません。
実技試験
学科の試験と異なり1年で前期後期の2回試験になります。
大体前期はスケールとエチュード、後期は自由曲という形でした。
自由曲もバロック古典のみとかロマン派の協奏曲のみとか縛りがあります。
スケールは小野アンナかカール・フレッシュ、エチュードはクロイツェル、上手な子はローデやパガニーニを弾いてました。
自由曲の協奏曲はブルッフとかラロのスペイン交響曲、メンデルスゾーン、チャイコフスキーくらいまでが多かったです。うちの学校はチャイコフスキー弾けると大分上手って感じでしたね。
副科はもう少しゆるく何を弾いても良かったような記憶があります。
中学3年の時に副科でモーツァルトのヴァイオリン協奏曲3番を弾いたら副科でそんな曲弾く人あんまいないよ笑と良い意味で言われました。点数もまあ副科でそれだけ頑張ったので最高点もらえました。
ちなみに高校からはヴァイオリン専攻だったのでそんなに甘くなくもうちょい普通の点数に下がってしまいました…
実技の試験の成績が良いと代表演奏に選ばれたり色々とメリットがあるので頑張るわけですね。まあそれだけじゃなくてやっぱり楽器を上手になるために音大附属にわざわざ来てるわけなので、楽器を頑張るのは当然と言えます。
お金はとてもかかる…らしい
やはり音大附属ということで学費も高く、楽器も高額なものが必要になり何かと余裕が無いと通えない世界みたいですね。
中学から大学まで通ったらとてもお金がかかりそうです。
例えばヴァイオリンはとても高い楽器として有名ですが、たしかに高校入るころまでは数十万くらいの楽器を持ってる子が多い(それでも高い)ですが、高校に入ると曲のレベルや腕も上がってくるので楽器買い替えのタイミングとなります。そこで買い替える楽器はだいたい新作イタリアが多かったので車買うくらいの金額が多かったです。
大学まで出てプロとしてやっていっても大きく稼ぐのが難しいので大変な世界というか、皆親御さんにもっと感謝しないといけませんね。自分ももちろんそうなんですが…
おわりに
今日は音大附属中学高校の話を軽くしてみました。
他にも色々面白いことはあったりするのですがあまり詳しく書いてしまうと良くないと思うのでこんなところにしておきます。
まあとにかく変わった世界なのだとは思います、私は中学から大学までその環境だったのでそんな変には思わないのですが、実際社会に出て普通科大学の方と交流するようになるとやっぱりなんか違うんだなあと思いました。
しかしプロのソリストなんかでは音大いかないで普通科のレベルの高い大学を卒業してみたいな方も多いので凄いなと思いますね。
そんなわけで音大附属中学高校のお話をしてみました。